その「大丈夫です」は、本当に大丈夫?― Z世代新入社員と心理的安全性の話 ―
- 原みどり
- 4月20日
- 読了時間: 5分
🟢 はじめに:Z世代の「沈黙」は安心のサインではないかもしれません
新入社員が、あまり質問も相談もしてこない。「大丈夫?」と聞けば、にこやかに「はい」と返ってくる。
それを見て、「順調に慣れてきたのかな」と少し安心する。——そんな場面、思い当たりませんか?もしかするとその沈黙は、「話しかけてはいけない空気」を感じ取ったうえでの“自衛”かもしれません。
Z世代は、相手の表情や言葉のニュアンスを敏感に読み取り、空気を察する力に長けた世代です。だからこそ、“ちょっとしたまなざし”や“何気ないひと言”が、距離や壁を感じさせるきっかけになってしまうこともあるのです。
🔴 なぜ“最初の3ヶ月”がカギになるのか?
心理的安全性とは、「ここで自分を出しても大丈夫」と感じられる状態のこと。でも実は、その安全性が最も求められる“入社直後”に、急激に損なわれる傾向があることが、米国の最新調査で明らかになっています。
最初は期待とやる気に満ちている新入社員でも、たった一度のやり取りで「質問しない方がよさそう」と感じてしまうことがある。
ネガティブな体験はポジティブな関わりよりも強く残り、たった一度の軽い否定で、「もう二度と聞けない」と感じてしまうことも。そしていったん失われた心理的安全性が戻るには、年単位の時間がかかるとされます。
だからこそ、“まだ信頼関係が築かれていないタイミング”での働きかけが、何より重要になるのです。
🟡 心理的安全性は、「問題ない」と言われないからこそ、見えにくい
「何でも聞いてね」と声をかけても、それだけで安心感が生まれるわけではありません。
本当に心理的安全性があるなら、新入社員は「質問してもいい」「困っていることを伝えてもいい」と感じられるはず。しかし現実は、「聞きたいけど聞けない」「話したいけど言葉にできない」という葛藤を、静かに抱えているケースが多くあります。
表面的には“問題なさそう”に見えても、その内側では、「話せないまま孤立していく」リスクが進行しているかもしれません。
🔵 心理的安全性とは「仲良しムード」でも「甘やかし」でもない
心理的安全性は、「なんでも受け入れる」ことではありません。むしろ、「違和感を言っても大丈夫」「助けを求めても評価が下がらない」と感じられる健全な対話の余白のことです。
「気を遣わないこと」や「誰とでも仲良くすること」と混同されがちですが、それは誤解です。本質は、「不安やミスを共有しながら、互いに学び合える関係性」を築けるかどうか。
Z世代の多くは、関係性ができていない相手に対しては、自分の気持ちを表に出すことに慎重です。だからこそ、上司や先輩の側から、対話のきっかけを丁寧に届ける姿勢が欠かせません。
👥🏢 あなたの職場では、こんな兆候ありませんか?
以下は、Z世代の新入社員が「自分を守るために黙っている」可能性がある職場のサインです。
✅ 受け入れ側(上司・先輩)向けチェックリスト
☐ 新入社員からの質問がほとんど来ない(むしろ安心している)
☐ 「聞きにくかったら言ってね」と言っただけで、対応した気になっている
☐ 自分の言動に対して、新入社員が必要以上に気を使っているように見える
☐ 挨拶や相談など、業務以外の会話がほぼ発生していない
☐ 「新人だからまだ知らなくて当然」と思いつつ、内心で“常識だろう”と思っている
☐ 雑談や休憩中の時間を“非効率”と感じ、関わりを減らしがち
☐ フィードバックを「修正指導」と捉えて一方通行になっている
☐ 「心理的安全性を高める」方法が、実はよくわかっていない
✅ 3つ以上あてはまる場合、「話せない空気」がある可能性が高いです。
🟠 Z世代の「話さない」理由は、決して一つではない
Z世代が沈黙する背景には、さまざまな理由があります。
失敗したくない/否定されたくない(防衛的沈黙)
「今さら聞けない」というプライド(自尊の維持)
空気を読みすぎて萎縮(過剰な配慮)
そもそも上司との関係構築経験がない(経験の欠如)
つまり、“言えない”のか、“言わない”のかは、見た目だけでは判断できないのです。
🧑🎓 新入社員自身も、こんなことで迷っていませんか?
次のような気持ちや行動パターンがあるなら、「話したくない」のではなく、「どう話していいかわからないだけ」かもしれません。
✅ 新入社員向けチェックリスト
☐ 質問したいけど、「こんなことも知らないのか」と思われそうで聞けなかった
☐ 「忙しそう」「ピリピリしている」など、相手の表情を見て話しかけるのをやめた
☐ 頼るよりも、自分でやり切らなきゃと無理をしてしまった
☐ 「空気を読んで動け」と言われたわけではないが、そうするべきだと感じた
☐ どこまでが質問OKで、どこからが“ウザい”のか、線引きがわからない
☐ 言葉の選び方に悩み、タイミングを逃した
☐ 質問したら「マニュアルにあるよ」と言われ、それ以来遠慮している
☐ 本当は不安やミスがあるけれど、「大丈夫」と答えてしまっている
✅ 複数当てはまる方は、「話してもいい場」を一緒につくっていきましょう。
🟣 “声をかける”のではなく、“対話を育てる”
フィードバックは一方通行でなく、双方向に → 「やってみてどうだった?」「どこが不安だった?」と気持ちを尋ねてみましょう
雑談や脱線も、“信頼を育む時間”と捉える → 緊張がほどけたときこそ、声が出てくることがあります
沈黙を評価でなく、好奇心で捉える → 「なぜ話せなかったのか?」と、想像力を向けてみましょう
🔚 おわりに:心理的安全性は「問いかけ」から始まる
心理的安全性は、仕組みや制度だけでは育ちません。それは、日々のささやかな“問いかけと応答”の連鎖のなかで、少しずつ築かれていくものです。
Z世代の新入社員は、まだ経験も言葉のストックも十分ではありません。けれど、対話を重ねる中で、自分の考えを言語化し、互いに学び合う関係を築くことはできます。
だからこそ、まずはこう聞いてみてください。「本当に、大丈夫?」そのひと言が、関係性の扉を開く鍵になるかもしれません。
いかがでしたか?
次回もお楽しみに! 何かヒントやきっかけになればうれしいです。
with all of my thanks and friendship💛
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